当社が福岡県の芦屋町への移転を決意した最も大きな理由は、芦屋町の美しい海岸線を一望できる景観の良さです。

当社のような自然派にこだわった商品開発を行う企業にとっては、商品そのものの良さのみではなく、その商品がどのような場所で、製造・開発されているのかは非常に重要な要素の一つです。

当社が現在、開発を進めている漁業者と連携した“粗塩”を活用した商品開発においても、目の前に美しい芦屋の海が見えることで、そのストーリー性は、格段に消費者に説得力を与える事ができます。

さらに そのように景観的にも美しい場所に立地しているため、週末の土・日になると、福岡市など遠方からも多くの観光客が来場され、販売促進の観点からも大きな強みになります。新生パルセイユブランドは、オーガニック、自生している植物などをそのまま原料に転換する技術を商品に転化していきます。

芦屋町の特産赤紫蘇との出会い

かねてより高トレーサビリティ商品の開発を模索していた私が当時、芦屋町地域づくり課職員の村上健史さんに「町内の農家さんで化粧品の材料になる植物があれば欲しいんです」と話していたら、村上さんが直ぐに動いてくれて、町内で赤紫蘇を栽培されている安髙さんから廃棄分の赤紫蘇を平成二十五年七月に「この位でいいですか?」と持ってきてくれました。

早速、従来の製造方法で試作品をつくってみたところ、紫蘇自体の効能が高いことに加え、色、香りについても和製ハーブとして需要が見込めると判断できました。

新商品開発の構想を描いた私は商工会へ、農商工連携も視野に入れた商品開発ができないかと相談に行ったところ、 商工会として農商工連携に向けた事前ヒヤリングを実施して頂ける事となりました。

安髙さんと有機的な連携が出来れば農商工連携への申請が可能であると判断したため、芦屋町地域づくり課の仲介を受けて私と安髙さんが役場で対面し工場も見学。事業構想に双方の同意が得られたため、農商工連携の申請に向けて連携を行うこととなり、官民共同の取り組みとなりました。

無農薬の赤紫蘇を求めて

「あたか農園」安高吉明さん

今回の新たな取り組みでは、生産基盤たる農地、生産設備の提供とともに、長年の間に培かった赤紫蘇の減農薬栽培技術、ノウハウを用い、農薬を使わない栽培方法での赤紫蘇の生産を行う事に了承頂きました。

この無農薬の赤紫蘇作りを了承してもらうのには条件がありました。赤紫蘇は害虫に食べられてしまうリスクが高く、無農薬では栽培が難しいので、当初は「無理かも知れない」と言われ、私は考えました。

農家さんの負担を減らさないと受けてもらえないと思い、 「赤紫蘇が虫に食われて茎だけになっても構いません」と条件を提示しました。実際エキスを抽出するのに茎だけに なっても可能であることは試作の段階で分かっていました。

安髙さんは、「それなら出来るよ」と了承してくれました。いよいよ7月無農薬の赤紫蘇収穫。なんと茎だけになっているのかと思い、覚悟はしていましたが、新鮮な立派な葉を付けた状態で残っていました。本当に感動しました。農薬を使用していない赤紫蘇が元気に葉を残し収穫を待っていたのです。

安髙さんも初めて農薬を使用せず作ってみたのですが、「意外にできるもやね」とご満悦でした。赤紫蘇プロジェクトの始まりです。

九州芦屋のシーソルト

海に面した福岡県芦屋町は昔から漁業の盛んな地域で、玄界灘と響灘がまじわる海から様々な魚介類が取れる水産資源が豊富な町です。

この美しい芦屋の海水を沖から汲み上げて、熱効率の良い耐火煉瓦造りの平釜で20時間じっくりと煮詰めた後、弊社独自製法の低温乾燥することで塩を焦がさず海そのものの風味を残すことが出来ました。

塩は粉雪状で、食感も良くあらゆる食材に使用できます。ミネラルを丸ごと含んだ旨みと深みのある海そのものの塩に仕上がりました。

パルセイユ 塩釜職人 吉田博さん

「パルセイユ塩釜職人として海塩の開発・製造に残りの人生を費やす覚悟です」と語る吉田博さん。芦屋町で長年漁師として従事し、独創的な発想を持つ逸材です。

塩作りには燃料が必要ですが、その燃料を海岸に流れ着く流木を使用するといった発想は、環境美化にも貢献できる、まさに一石二鳥の思い付きです。